研究概要 |
研究目的:これまで癌の遺伝子治療の治療効果が不十分であったのは腫瘍への特異的遺伝子導入効率の低さが一因として考えられる。この解決策として腫瘍特異的に複製可能なAdをあげることができる。最近、ONYX社は腫瘍特異的複製能を有する細胞傷害性の高いAd(ONYX-015)を開発し臨床治験で一定の効果を得たと報告している。しかしONYX-015にはいくつかの問題点がある。まずAdに対する免疫学的問題点を解決しなければならない。さらに同Adは正常細胞でも複製し癌組織特異性が高いとは言えない。そこで本研究では (I)AdのE3を過剰発現させることにより免疫反応を惹起せず反復投与が可能で, (II)複製開始に必須なE1Aを癌胎児性蛋白プロモーター(OFPp)で制御しさらにE1BのE1B-55Kdを除くことにより二重に腫瘍特異性が高く、 (III)腫瘍特異的に誘導されるE1Aは抗癌剤感受性を増強することから癌細胞特異的に抗癌剤増強効果を合わせ持つ組換えAd(AdTTS-Rep)を作製し,進行癌に対する臨床応用を目指す。方法と結果:(1)OFPpにdriveされるE1AおよびCMVpでdriveされるE1B-19Kdの二つの発現単位を組み込んだpAdTS-Repを作製した。既報に従いAdTS-Rep(AdAFPep/Rep,AdCEA/Rep)を得た、AdTS-Repは癌細胞特異的細胞傷害性を示した。(2)AdTS-Rep感染によりPLC/PRF/5、M7609はCDDP,5-FUおよびADMに対する抗癌剤感受性が増強した。(3)AdTS-RepはOFP産生癌細胞のxenograftの系(PLC/PRF/5およびM7609)において極少量(10^8pfu/100ul)のウイルス投与により腫瘍の完全退縮した。この様に腫瘍特異的に複製能を有するAdTS-Repは癌の遺伝子治療に有効なmodalityとなり得ることが確認できたことから、現在E3を過剰発現させ反復投与が可能になることを期待しさらにAdTTS-Repを作製中である。遺伝子治療を実際に臨床応用する場合、高度進行癌が対象となることが予想されこの様に反復投与が可能であることは重要と考えられ現在検討を進めている。
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