研究概要 |
In vivoにおいて種々の微小管作用薬が、がん細胞の微小管機能を停止、細胞分裂を阻害する作用のみならず、腫瘍の血管透過性を増加する現象を認めている。この微小管作用薬の血管に対する作用に関して抗腫瘍効果との関わりを明らかにすることを目的に以下の実験を行った。 (1)IL-2,IL-6,IGIF,TNF-α,GM-CSF等のサイトカイン遺伝子導入ルイス肺癌株(LLC)に微小管作用薬TZT-1027を接触し増殖抑制効果を見た。in vitroにおける腫瘍増殖抑制効果には差がなかった。 (2)IL-6,TNF-αcDNA導入LLCを皮下移植した群でTZT-1027投与は他群に比し高い腫瘍増殖抑制効果を認めた。 (3)TZT-1027を投与IL-6,TNF-α導入LLC移植マウスにし、投与前後の腫瘍組織の遺伝子発現変化をcDNA発現アレイを用い検討した。両群に共通してTZT-1027投与後にplasminogen activator inhibitor-2(PAI-2)の発現の強い上昇を認めた。PAI-2は有力なanti-angiogenic factorであり、この発現の上昇が高い腫瘍増殖抑制効果の要因の一つと考えられた。 (4)IL-6,TNF-αのLLCcDNA導入細胞担癌マウスにおいて、TZT-1027投与前後の腫瘍組織を摘出し、凍結切片を作製し抗CD31抗体を用いて免疫組織染色をおこなった。TZT-1027投与前のIL-6,TNF-α群においてはLLc/neo群に比べ腫瘍血管の増殖が明らかに亢進した組織像が観察された。TZT-1027投与後の組織像においてはLLC/neo群に比べIL-6,TNF-α群では腫瘍組織の破壊の度合いが強く、腫瘍血管の破綻を示唆する組織像が観察された。このことは微小管作用薬が血管に作用する機序を解明する上で重要である。蛋白質での発現上昇の確認、血管新生における上流因子を検討している。
|