研究概要 |
B細胞表面抗原であるCD20に対するモノクローナルキメラ抗体は、標準的治療のない低悪性度リンパ腫において高い抗腫瘍効果と安全性が示され、かつ中悪性度リンパ腫においても有効性が確認されている。我々は、この抗腫瘍効果の中に、免疫学的排除とは異なり、CD20抗原と抗体との結合により誘発される、B細胞の細胞死機構が存在することを見いだした。抗CD20抗体の抗腫瘍剤としての認識から、CD20を標的としたB細胞性腫瘍の増殖抑制機構の解析と、抗CD20抗体を用いたより抗腫瘍効果の高い多剤併用療法を開発するための基礎的検討を行った。この結果、以下の3点が明らかになった。1.抗CD20キメラ抗体治療後の残存腫瘍の存在様式について検討したところ、残存腫瘍は、抗CD20キメラ抗体と結合したまま生体内に存在していることが示唆された。2.抗CD20キメラ抗体投与後の再発患者より腫瘍細胞株を樹立し、抗20抗体に対する増殖抑制機構が残存することが明らかとなり、また、B細胞腫瘍株から、抗CD20抗体耐性細胞株を樹立し、解析したところ、実際の臨床的耐性と類似した耐性機構であることが示唆された。 3.B細胞腫瘍株を用いて、ヒトリンパ腫治療に通常用いられる抗癌剤と抗CD20抗体の併用による増殖抑制機構を検討したところ、抗CD20抗体は、一部の抗癌剤に対し、相加的増殖抑制活性を示した。すなわち、Doxorubicin,Vincristine,Fludarabineを用い、SUDHL4および、び慢性大細胞型リンパ腫細胞株RCK8を対象にその効果を検討した。その結果、低濃度のDoxorubicin存在下では、抗CD20キメラ抗体を1,10,100μg/mlの投与により、相加的増殖抑制が認められた、Vincristine,Fludarabineにおいては、抗CD20キメラ抗体による増殖抑制は認められなかった。
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