研究概要 |
ヒトT細胞JurkatのFas抗原を刺激するとアポトーシスが誘導されるが,このときカルパインの内在性阻害タンパク質カルパスタチンが断片化することを発見した.カルパスタチンの断片化は,カスパーゼの阻害剤でアポトーシスを抑えると同時に抑制された.ヒトカルパスタチン全長をコードするcDNAを大腸菌で発現させたリコンビナントタンパク質を用いて,アポトーシス細胞由来の細胞質画分がカルパスタチンを切断するか調べたところ,細胞レベルと同様な限定分解が認められた.カルパスタチンの限定分解は,非アポトーシス細胞の細胞質画分では起こらず,一連のカスパーゼ阻害剤で抑えられた.リコンビナントカルパスタチンにカスパーゼ3あるいは7を作用させると,限定分解が起こり,切断部位は233残基目のアスパラギン酸のカルボキシル末端側であることが判明した.その結果,カルパスタチンの4個のカルパイン阻害ユニットの内のアミノ末端側が限定分解によって破壊されることが分かった.限定分解によって生じるアミノ末端側の断片に対する切断部位特異抗体を作成し,アポトーシス時のカルパスタチンの細胞内動態を調べると,アミノ末端側断片は速やかに代謝されていることが示唆された.ところがこの抗体は,カルパスタチンとは異なる新たな分子を認識した.部分アミノ酸配列決定により,ひとつは熱ショックタンパク質に属するAPG-2であることが分かった.本研究では,切断部位特異抗体を用いて類似した特異性をもつカスパーゼの標的分子の検索が可能であることが示された.現在,方法論の一般化を試みている.
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