研究概要 |
申請者らは鉄イオン代謝のマスター遺伝子であるRNA結合蛋白,IRP2(iron regulatory protein 2)が鉄イオン存在下でのみプロテアソームで分解されること,分解に先立ち鉄イオンによる酸化修飾を受けることがシグナルとなって,ユビキチン修飾を受けることを示してきた.本研究によりアルミニウムの存在により,細胞内でIRP2の鉄依存性分解が抑制されること,また,in vitroにおいてアルミニウムはIRP2の鉄イオンによる酸化変化を抑制することを示し,IRP2に鉄結合部位が存在し,その鉄結合部位に鉄イオンが結合することにより生じる酸化変化がIRP2のユビキチン修飾のシグナルとなること,アルミニウムがIRP2の鉄結合部位と高い親和性を有することを示した.ユビキチン修飾に関与する酵素群は,E1,E2,E3(ユビキチンリガーゼ)の3群からなり,そのうちE3が基質特異性を決定している。現在、IRP2をモデル系として酸化的修飾がシグナルとなるユビキチン修飾を触媒する酵素群の同定をin vitro ubiquitinationの実験系を用いて進めている。これまでに、IRP2のユビキチン修飾が大腸菌で発現させた73アミノ酸からなるIRP2特異的ドメインの添加により阻害されること,IRP2のユビキチン修飾のE3(IRP2-E3)はIRP2特異ドメインに結合することを確認しており,現在その同定を進めている.また,IκBαのE2の同定を進め,UBCH5b,cがE2であること,von Hippel-Lindau病の原因遺伝子かつ腎細胞癌の癌抑制性遺伝子産物であるpVHLがユビキチンリガーゼの基質認識サブユニットとして機能していること,シグナル伝達系のアダプタータンパクとして知られていたc-CblがEGFレセプターのE3であることを示した.
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