研究概要 |
動物は感覚刺激に対して数百ミリ秒で適切な行動を生起できるようになる.この数百ミリ秒の情報処理が可能となる条件のひとつとして単一細胞がミリ秒域の時間情報を識別できることが必要となる.我々は,単一細胞の時間分解能を2つのアプローチで調べた. 「ミリ秒時間域での発火時系列の再現性」:Mainen and Sejnowskiは変動電流に対する神経細胞の発火タイミングが標準偏差が1ms以内の精度で再現性をもつという電気生理データを示した.我々はこの実験結果をHodgkin-Huxleyの方程式を用いて再現した.また,モデルの解析から入力電流の波形による発火タイミングの再現条件を求めた,結果:(1)電気生理実験の計算機シミュレーションにより,定常電流に対する発火のタイミングには再現性がないのに対して,平均値が同じである変動電流に対しては再現性があるという実験結果が再現された.(2)モデルの解析からしきい値下の入力がある時間続いた後の強い興奮入力の上昇期間で発火タイミングのずれが小さくなることを示した.(3)これらから変動の分散が大きい入力に対して発火タイミングに情報が書き込まれている可能性を示した. 「スパイク干渉による発火時刻変化」:脳内ではひとつの神経細胞に多数のスパイクが様々な時刻に入力するので発火時刻の変化は簡単には予測できない.我々は最も簡単なスパイク干渉として2つのスパイクの強度及び相対入力時刻を変化させたときの発火時刻をHodgkin-Huxleyモデルで定量的に調べた. 上記の結果から,ミリ秒時間域の発火時刻パターンに情報が記載できるための条件のいくつかが明らかになった.
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