研究概要 |
視覚系の物体認識に伴う特徴情報の統合・結合過程を脳イメージング法と心理物理学的測定法により解析した。 1.fMRIによる三次元形態認識の機構の解析: 顔、道具、建物などに特徴的に反応する脳の領野は、Fugiform gyrusにあることが示されているが、物体認識の中間情報(中間特徴)がどこで行われるかはまだ明らかにされていない。ここでは、昨年に引き続きこの中間段階の神経機構をfMRIにより探索し、活動部位の形態性との関連を明らかにした。その結果、中間段階の情報処理(形態形成)に関与する主な部位は、pLO,iLO,dLOG,iIPS,sIPS,pOTSであること、また、これらの部位の神経活動の刺激形態依存性を明らかにした。 2.オプティカルフローによる進行方向推定過程の解析: 飛行機、自動車など乗って移動するとき、われわれはオプティカルフローから進行方向を正確に推定することができる。この進行方向推定のメカニズムを心理物理学的実験により分析し、その数理モデルを提案した。提案したモデルはヒトのパフォーマンスをよく説明できる点で、従来のモデルより優れている。 3.運動知覚におけるの対比・同化過程の解析: 方向が異なる運動要素が知覚的にどのように統合されるかを心理物理学的実験により分析し、つぎの特性を明らかにした。1)近接した運動の要素は時間周波数条件にかかわらず、ベクトル加算的に統合される。2)空間的に離れた運動要素は、低時間周波数条件では同じ方向の運動要素は減算的に、反対方向の運動要素は加算的に統合される。しかし高時間周波数条件では、同じ方向の運動要素は加算的に、反対方向の運動要素は減算的に統合される。
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