3次元面構造を知覚するためには、脳は、面の形のみならず面の奥行きや傾きを知らなくてはならない。脳の中で、どのように、形の情報と面の奥行き手がかりである両眼視差の情報が相互に作用しあうのかを問う研究の一環として、従来、形や色などの2次元図形情報を伝えていると考えられてきた下側頭葉皮質(IT野)の細胞の両眼視差に対する反応を検討した。 2頭のサルのIT野から活動を記録した225の細胞の60%が、両眼視差を与えることで反応の強度を変化させた。この反応強度の変化は、単眼への刺激への反応の変化では説明がつかず、また、輻輳運動を含む眼球運動も起きていないことから、両眼視差への感受性を反映したものと考えられる。ほとんどの細胞は、far cell(非交差視差を好む細胞)またはnear cell(交差視差を好む細胞)と分類され、0視差において選択的に興奮したり制御されたりする細胞は少なかった。これら、両眼視差選択性を持つIT野細胞はすべて、形の変化に対しても感受性を示した。ほとんどの細胞は、提示した形の種類によらず、同じタイプの両眼視差(すなわち、交差視差か非交差視差か)を好んだ。また、両眼視差選択性は、刺激の提示位置の変化に対しても変化を示さず、位置不変性を持っていた。1本の電極から記録された近傍の2つの細胞は、似た両眼視差選択性を持っていた。 以上の結果は、IT野細胞が、形、色、もようなどに加えて両眼視差の情報も伝えていることを示している。テストした細胞の60%が、形に加えて両眼視差にも感受性を持ち、また、その両眼視差選択性は位置不変性を持っていた。このことから、視野内の異なった部位から、似た両眼視差と形の情報が、ここのIT細胞に収斂してくると考えられる。
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