研究概要 |
原核生物から真核生物まで基本的に保存されているDNA修復および突然変異誘発機構を詳細に明らかにするためには、それに関わる蛋白質の立体構造を決定することが有力な情報となる。そのために、安定で結晶化も容易である高度好熱菌蛋白質を用いて結晶化等を行った。その結果、UvrBについては2.1Å分解能のX線立体構造を決定した。得られた構造を元にしてUvrBと障害塩基を含むDNAの相互作用について考察することができた。これらの結果をまとめ、数ヶ月の遅れはあったが競合グループと同じ1999年にヌクレオチド除去修復にかかわるUvrBの立体構造を初めて報告した(Nakagawa et al.)。また、MutMについては1.9Åまでのデータを得ており、蛋白質中に含まれる亜鉛原子のX線異常分散データから位相情報も収集できている(Sugahara et al.)。これらを元にしてMutMの立体構造を決定した。決定された構造から障害塩基を含むDNAとの相互作用について考察を行い、それらについてまとめた論文は現在投稿中である。また、他のDNA修復蛋白質(UvrA,UvrD,MutS)についてもX線結晶構造解析を進行中である。 それと平行して、各蛋白質の溶液中での平衡論的及び速度論的解析も行った。組み換え修復にかかわるRecAについては、高度好熱菌および超好熱菌由来の蛋白質について温度との関わりを詳細に調べ、生理的温度でのみ本来の活性を発現させる性質がそれぞれの酵素にあることを初めて見出した(Maria et al.,Kato et al.)。さらに各蛋白質と補因子(DNA,ヌクレオチド)との相互作用を、蛍光スペクトルと蛍光偏光を用いて測定し平衡論的解析を行った(Yamagata et al.)。また、会合状態の変化をX線小角散乱・動的溶液散乱・ゲル濾過等の手法を用いて測定した。
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