研究概要 |
本研究では、インターロイキン2受容体(IL-2R),IL-4R,IL-7R,IL-9R,IL-15Rの共通サブユニットで、伴性重症複合免疫不全症の原因遺伝子であるIL-2Rγcの構造機能相関を、培養細胞系とトランスジェニックマウスの系を用いて解析した。 1.IL-2Rγcから伝達されるJak3非依存性シグナルの同定 IL-2Rγcの細胞内ドメインはJak3蛋白チロシンキナーゼの結合に必須であるC末端領域と膜近傍領域の二つの領域から構成されている。本研究では、膜近傍領域からも、Jak3の活性化を介さないシグナルが伝達されることを明らかにした。 2.1L-2Rγcトランスジェニックマウスの作製とその解析 リンパ球特異的プロモーターを用いて(1)野生型、(2)細胞内ドメイン全体を欠失させた変異体、そして(3)細胞内ドメインのうち膜近傍領域を保持するがC末端のJak3結合領域を欠失させた変異体、のそれぞれをIL-2Rγc欠損マウスに発現させ、トランスジーンによるIL-2Rγc再構成マウスを作製した。 IL-2Rγc欠損マウスで認められる免疫不全状態は、野生型IL-2Rγcの発現によりほぼ完全に回復した。一方、細胞内ドメイン全体を欠失する変異体を発現させても、免疫不全状態の回復は認められなかった。それに対して、膜近傍領域のみを保持する変異体の発現により、T細胞の分化が顕著に回復し、かつT細胞の分化に重要であることが示唆されているBc1-2蛋白の発現も顕著に回復した。このことから、IL-2Rγc細胞内ドメインの膜近傍領域は、T細胞分化においてBc1-2の発現を誘導するシグナルを伝達することにより、T細胞分化を誘導していることが示唆された。しかし、このマウスにおけるT細胞機能の回復は認められず、Jak3結合領域は、T細胞の機能の発現において重要な役割を果たしていることが示された。
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