研究概要 |
脂肪酸合成の調節を行う酵素、アセチルCoAカルボキシラーゼ(ACCase)、は周囲の条件に応じて活性が調節され、脂肪酸合成量を決定する重要な酵素である。植物では葉緑体に本酵素があり、光により活性化される。本酵素は、カルビンサイクルの酵素と同じ様な仕組みで、光活性化されることを私は報告した(Proc.Nat1.Acad.Sci.USA,94,11096)。すなわち光シグナルはレッドクスカスケードで伝達され、5炭糖還元回路と脂肪酸合成経路を同時に活性化している。この光合成と脂肪酸合成の協調にみられるコミュニケーションを分子レベルで記述することを本研究の最終目的とした。これまでの研究で、ACCaseを構成する2種類の複合体(biotin carboxylaseとcarboxyltransferase)のうち、carboxyltransferaseが還元され活性化されることを証明した。本年は部位特異的にシステインを改変しcarboxyltransferaseのどのシステインが還元されるか決めるために、recombinant carboxyltransferaseを作成することを目的とした。 carboxyltransferaseを構成する2つポリペプチドcDNAを挿入した発現用プラスミドを作成し、大腸菌で発現させた。得られた酵素は自然界に存在する酵素と同様な性質を示し、還元により活性化された。これより、この発現系を用いて、部位特異的にシステインを改変すれば、分子レベルで、光による活性化を証明できる見通しが立った。2つのポリペプチドの非保存領域を削除し、少し短いポリペプチドを発現するように改変したところ、元の酵素と同じように活性化されたので、この中のシステインが関与していると推定された。これらの領域に8こシステインがあるので、今後、各々を改変して、活性に及ぼす効果を調べ、還元に関与する残基を決定する予定である。
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