研究概要 |
1.分裂酵母RNAポリメラーゼII(PolII)を構成するRpb1-Rpb12の12種のサブユニット蛋白質のうちRpb4を除く11種をコードするcDNAの1つまたは二つを組み込んだバキュロウイルスを作製し、これらを組み合わせた共感染により、サブユニット蛋白質を任意の組み合わせで、培養昆虫細胞内に発現されることに成功した。発現細胞内で構成されたサブユニット複合体の単離のため、Rpb3をグルタチオン-S-トランスフェラーゼとの融合蛋白質として発現し、Rpb1にはヒスチヂンタグ配列を付加した。11種のサブユニットを共発現した細胞抽出液からのグルタチオンアフィニティー、ニッケルイオンアフィニティーによる分離により、Rpb1,2,3,5,7,8,11の7サブユニットによる複合体が単離された。少数のサブユニットの共発現実験により、(1)Rpb1,2,5,7,8,11は、それぞれ、Rpb3と直接相互作用する。(2)Rpb11は、Rpb3との相互作用によりPolIIに集合する。(3)Rpb11によりRpb3-Rpb8の相互作用が強化される。(4)Rpb8により、Rpb1-Rpb3の相互作用が強化される。以上が明らかとなり、サブユニット集合過程での多重相互作用の重要性が示された。今後は、この系に改良を加えて、完全なPolIIの再構成を目指す。 2.分裂酵母rpb4遺伝子を単離した。rpb4遺伝子、組換えRpb4蛋白質、抗Rpb4抗体等を用いた解析により以下の知見を得た。(1)分裂酵母Rpb4は、解析が先行している出芽酵母RPB4とは一次構造が大きく異なり、高等生物のRpb4と類似である。(2)出芽酵母RPB4は、一部のPolIIにしか含まれないが、分裂酵母Rpb4は、高等生物のものと同様、全てのPolIIに含まれる。(3)出芽酵母RPB4は必須遺伝子ではないが、分裂酵母Rpb4は必須遺伝子である。(4)分裂酵母、出芽酵母の異種間でRpb4-Rpb7のヘテロ二量体形成が可能である。以上より、分裂酵母PolIIは、高等生物PolIIのより優れたモデルであると言える。
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