研究概要 |
大腸菌の低分子RNAの10Sa RNAはアラニンをチャージしてtRNAとして働く一方、メッセンジャーRNAとしても働くことからtmRNAとも呼ばれている。我々は10Sa RNAをコードするssrA遺伝子の欠失株が45℃で温度感受性を示すこと、10Sa RNAに依存する温度感受性の大腸菌ミュータントが分離できること、それらのミュータントはいろんな必須遺伝子に変異をもつものであるが、thymidylate synthase遺伝子の温度感受性株のthyAts12-20ミュータントは10Sa RNAに対して最も鮮明な表現型を示す。DNA塩基配列の解析からP228LとT216Aの二つの変異を持つことが判明した。このミュータントの10Sa RNAによる温度感受性の相補には、さらにsmall RNAをコードする遺伝子のspf(spot42)遺伝子の関与が必要であることが明らかになってきた。どのようにこのsmall RNAが働いて温度感受性を相補するのかについては引き続き研究している。 大腸菌のtRNA Leu_6はタンパク質合成に際してはwobblingが可能な別のtRNA Leuが存在するので、non-essentialなtRNAの一つである。これまでの分子遺伝学的な研究により、このtRNAはgidAと命名されている細胞分裂に関与する遺伝子と機能的に関わりをもつことを明らかにした。大腸菌ではこのようなnon-essentialなtRNAはあと7種類存在する。これらのtRNA遺伝子に的を絞り、遺伝子破壊を試みている。tRNA Thr_2遺伝子の欠失株より野生型tRNA遺伝子で相補されるような温度感受性ミュータントの分離に成功し、温度感受性変異を調べてみると、脂肪酸代謝に関与する一つの遺伝子におちることが判明した。同様の実験をSer_2,Pro_1,Arg_4,Gly_1,Gln_2,Leu_1などについても開始している。
|