研究概要 |
膜タンパク質の研究においては,1分子レベルでの観察,操作といった研究はほとんど手つかずの状況である.これは,膜タンパク質が脂質二重膜という特殊な環境下のみで機能を発現できるため,顕微鏡下で人工的に再構成することが困難であるためと考えられる. 本研究では,1分子イメージング,1分子ナノ操作システムに人工平面膜作成技術を利用し,顕微鏡上で直接観察,測定するが可能な脂質二重膜を形成させることを試みた.テフロンの薄板に直径約100ミクロン程度の穴をあけ、デカン,もしくはデカン-クロロホルム溶媒に分散させた脂質を穴に添加した.穴に張られた脂質分子は最初バルク状態であるが,しばらく放置すると中央部に新たなエリアが形成されるようになる.このエリアが脂質二重膜であると考えられる. この平面膜に,鞭毛モーターを組み込むための基礎データとして,菌体をレーザートラップで捕捉,操作した場合の菌体に及ぼす影響についてトラップする前とトラップから開放したあとでの菌体の運動の様子を検討することで,調べてみた.その結果,トラップする時間,レーザーの出力に依存して菌体の運動の様子は変化し,最後には動かなくなった.これは,近赤外のレーザーを用いていることにより,菌体の温度が上昇するために菌体にダメージを与えているものと思われる.菌体のどの部分に影響を及ぼしているかはまだ不明であるが,モーター自体にダメージを与えているとしたらその対策を検討しなくてはならない. 今後,レーザートラップを操作することにより,菌体を平面膜に組み込むことを取り組む予定である.
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