最近、アルツハイマー病(AD)患者の栄養学的解析から、AD患者では多価不飽和脂n6/n3比が高いこと、さらにn-3系脂肪酸であるEPA投与により認知機能の改善が認められる場合があることが報告された。一方、脂肪酸結合蛋白は、体内における脂肪酸代謝キー蛋白であることが知られていた。例えば、腸型脂肪酸結合蛋白(IFABP)においては、第2エキソンの変異(A→G)により54番目のアミノ酸がAla→Thrに変異すること、このThr-IFABPは脂肪酸に対する結合能が上昇することで、糖尿病の発症に関係している可能性があることなども報告され、その機能が注目されている。この他脂肪酸結合蛋白には8種類の分子種が存在することなども報告されている。そこで、脳内における脂肪酸結合蛋白の局在を明らかにする目的から脂肪酸結合蛋白に対する抗体を用いて免疫組織学的検索を行った。 その結果、脂肪酸結合蛋白の種類により神経細胞、グリア細胞で発現するといった差が見られることが明らかとなった。 脂肪酸結合蛋白と神経細胞死(防御)の関係、EPAの作用との関連等を明らかにするためには、アルツハイマー病脳などの疾患脳における検討が必要と思われる。
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