研究概要 |
X染色体連鎖アポトーシス阻害タンパク(XIAP)はアポトーシスの実行において中心的な役割を果たす蛋白質分解酵素、カスペース-3,7,9の選択的な阻害因子である。XIAPはBIRという約70アミノ酸からなる特徴的なモチーフを3個(BIR1,2,3)繰り返し構造としてN末側に有するが、我々はそのうち、BIR2とよばれる領域がカスペース-3,-7を阻害するのに必要かつ十分であることを見いだした。カスペース-3、-7は配列上のホモロジーが高く、基質特異性も大変よく似ていることから、XIAPがこの二つの酵素を阻害する仕組みも同じと予想された。ところが本研究で行った酵素学的な解析によって、XIAPはカスペース-3に対しては競合的阻害剤として、またカスペース-7に対しては非競合的阻害剤として作用することが明らかになった。XIAPの構造機能解析によって、148番目のアスパラギン酸(D148)がカスペース-3の競合的阻害に、またBIR2モチーフがカスペース-7の非競合的阻害に必要であることが示された。またカスペース-7側ではN末領域の一部がBIR2モチーフと結合し、非競合的阻害が起こることがわかった。D148をアラニンに変異させたXIAP(XIAP-D148A)はカスペース-3は全く阻害しないが、カスペース-7を特異的に阻害することも判明した(論文投稿中)。この変異体を用いて、さまざまな生理的および病理的条件におけるカスペース-7の役割を調べることがはじめて可能になった。今後変異体を用いてカスペース7の生理的、病理的意義を解明したいと考えている。またこの研究をもとにカスペース7特異的なカスペース阻害剤の開発も視野に入れている。
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