研究概要 |
ヒトヘルペスウイルス6型(HHV-6)とHHV-7は主としてCD4陽性T細胞に感染して、種々の生物学的変化を惹起させることが知られている。本研究では、HHV-6およびHHV-7感染によるケモカインレセプターCXCR4発現抑制機構を検討し、HIV感染症におけるこれらウイルスの意義について考察した。得られた結果は以下のとおりである。 1)HHV-6,HHV-7感染により細胞表面CXCR4発現が著明に低下した。2)CXCR4mRNA発現は低下しており、その安定性に変化がなかったことより、転写レベルでの抑制と考えられた。3)CXCR4promoterにおいて転写に重要と思われるいくつかの部位を同定した。4)この内、転写因子NRF-1はCXCR4転写を正に調節し、YY1は負に調節することが明らかとなった。5)HHV-6,HHV-7感染によってNRF-1の結合活性が低下し、YY1結合活性が上昇することが示された。6)luciferase assayの結果、CXCR4転写抑制には、YY1結合上昇が重要であることが示された。7)ウイルス感染細胞では、YY1とc-Mycとの複合体形成が低下しており、このことがフリーなYY1レベルを上昇させ、結合上昇に結びつくものと考えられた。8)さらに、c-MycとMaxとの複合体形成が上昇しており、このことがYY1とc-Myc複合体形成低下の機序の一つと考えられた。9)ウイルス感染によって細胞内のYY1,c-Myc,Max蛋白の発現そのものに変化は認められなかった。 これらの結果から、HHV-6,HHV-7感染によりHIVcoreceptorであるCXCR4が転写レベルで抑制され、この機構にYY1結合活性上昇が重要であることが明らかとなった。今後、YY1をCD4陽性T細胞の特異的に強制発現させることにより、HIV感染を防止できる可能性が示された。
|