研究概要 |
HIV-1インテグラーゼの阻害剤を開発するため、酵素の活性部位に結合しその近傍の、酵素のDNAとの結合に重要なリジン残基を修飾するヌクレオチド誘導体を設計、合成し、阻害剤としての活性を検討した。ヌクレオチド部分が活性中心に結合した際、リジン残基修飾に適した位置に修飾基(2,5-dihydroxy-2,5-dihydrofurfuryl基)を配置した。5'末端をリン酸化した、2'-デオキシアデノシン、2'-デオキシシチジン、2'-デオキシアデニルデオキシシチジンの3'末端にリジン残基修飾基を導入した化合物(A)、(C)、(AC)また2'-デオキシグアノシルチミジン誘導体の5'末端にリジン残基修飾基を導入した化合物(GT)を合成した。HIV-1インテグラーゼが触媒する3'-プロセッシング反応、およびストランドトランスファー反応を検討し、高い酵素阻害活性を持つジヌクレオチドpApCと比較したところ、いずれの化合物もpApCと同等またはそれ以上に両反応を阻害した。これらの化合物の対応するメチルエーテル体は活性中心への結合能力は同等と考えられるが、リジン残基修飾能はない。メチルエーテル体は高い阻害活性が見られなかったことから、リジン残基修飾により効率良く酵素を阻害したと推測される。一方、活性中心に結合しないチミジンの3'末端にリジン残基修飾を導入したTは酵素阻害能が低かった。また2'-デオキシグアノシンの3'末端にリジン残基修飾基を導入したGはリジン残基修飾能のない対応するメチルエーテル体とともに高い酵素阻害活性を示し、A等と違う機構で酵素を阻害している可能性がある。今回用いた化合物による酵素との共有結合の生成、その位置を確認する予定であり、より良い阻害剤設計の指標とする。
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