ウイルスの感染性に重要なN末の機能を解析するため、27-3kD Nef蛋白の7番目のアミノ酸に停止コドンを導入し、N末アミノ酸6個のみ残存するHIV(6AA-Nef)を作成した。既存のNef変異ウイルスは感染性が10分の1程度に低下するのに対し、このウイルスは感染性を全く喪失し、CEMに感染させても逆転写の初期の段階で阻害があることを明らかにした。このウイルスは20番目のメチオニンから読まれる25kD Nefを発現していることが示唆されたため、野生型および6AA-NefウイルスのNef遺伝子部分を発現ベクターに入れ換え、in vitro transcription/translation及びCOS細胞へのトランスフェクションで25kDの蛋白が作られることを確認した。そこで、25kD Nefも発現しないように2つめの変異を24番目のアミの酸遺伝子に導入したウイルスを作成し、これをCEMに感染させると、感染性は完全に回復することがわかった。従ってこの25kD Nef蛋白の存在が何らかの機構でウイルスの感染性を左右している可能性が考えられた。この機構を解明するため、恒常的に27kD Nefおよび25kD Nef蛋白を発現するCEM細胞を作成した。これらの細胞におけるCD4およびMHC class Iの発現をFACSで解析すると、27kD Nef発現CEMでは両方とも発現が低下しているのに対し、25kD Nef発現細胞では変化がなかった。従ってウイルス感染性および細胞表面抗原の発現抑制にはNefのN末が重要であることが明かとなった。
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