血球分化に関与する遺伝子の探索を目的に遺伝子トラップ法を行い、CREB-binding protein(CBP)変異マウスを作製した。CBPは多くの転写因子のコアクチベーターとして転写制御機能に関与し、赤血球系転写因子GATA-1、EKLF、NF-E2、c-Myb、AML-1遺伝子と結合すること、EKLFやGATA-1自身をアセチル化しその転写活性を促進することが報告されており、造血における重要な機能が示唆されている。ホモ接合体は、1次造血障害及び血管網形成不全を示し胎生10.5日までに全例死亡した。卵黄嚢造血は前駆細胞レベルの障害(コロニー形成能は赤血球系細胞で対照の22%、顆粒球、マクロファージ系細胞で69%に低下)が示唆された。また、胎生致死のため、2次造血能及び血管網形成能をOP9細胞上での傍大動脈臓側中胚葉(P-Sp)器官培養法を用いて検討した。ホモ接合体由来P-Sp培養系では血管床形成、血管網形成とも全く認められず障害されていた。また、培養液中の浮遊血液細胞の赤血球系コロニー形成は完全に抑制され、顆粒球、マクロファージ系コロニー形成は20%に低下しており2次造血においてもCBPが関与していることが示唆された。しかし、VEGF165の投与によりin vitroでの血管床形成、血管網形成は軽度回復し、この培養液中の浮遊血球細胞を用いてのコロニーアッセイにおいて赤血球系コロニー形成は軽度回復した。このことは、造血における微小環境としての血管内皮の重要性を支持するものと考えた。 以上よりCBPは1次及び2次造血において血球分化、特に赤血球系分化における前駆細胞の増殖、血管内皮細胞においては特に血管芽細胞の増殖・分化を制御していることを明らかにした。
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