研究概要 |
1.二成分制御系遺伝子の検索と構造決定 シロイヌナズナESTクローンバンクとゲノム情報の検索から、現在14種類のレスポンスレギュレーター遺伝子(ARR)、5種類のHPtメディエーター遺伝子(AHP)と3種類の新規センサーキナーゼ遺伝子(AHK)を確認し、cDNAレベルでの一次構造を確定した。ARRならびにAHP遺伝子群の発現解析を行い、いずれも根器官での発現が顕著であること、AタイプのARR遺伝子の発現は植物ホルモンのうち、サイトカイニンでのみ一過的に誘導されるがBタイプはそうではないことを見出した。 2.ARR・AHPの分子機能 1)Aタイプに属するARRタンパク質を精製し、大腸菌のHPt因子からリン酸基を受容できることを確認した。AHPタンパク質についても同様に、大腸菌のハイブリッドセンサーキナーゼからリン酸基を受容できること、ならびにそのリン酸基をARRタンパク質に転移できることを確認した。 2)出芽酵母のHPt因子をコードするYPD1遺伝子の変異をAHP1が相補できることを証明した。この相補活性にはリン酸化部位であるヒスチジン残基が必須である。また出芽酵母のセンサーキナーゼをコードするSLN1遺伝子の変異はAHK3遺伝子によって相補されることも示した。この相補活性にも自己リン酸化部位のヒスチジン残基が必須である。以上の結果はARR,AHP,AHK各分子が二成分制御系の因子として機能しうることを示している。 3.植物における機能解析 1)酵母Two-hybrid法を用いてAHPと相互作用する植物の因子を検索した。その結果、AHP1〜3はBタイプのARR(ARR1,2,10)と、AHP2,3はそれらに加えてTCPドメインを持つ新規タンパク質と相互作用しうることを明らかにした。前者については酵母の系のみならず精製タンパク質のレベルで相互作用を確認し、相互作用がHPtドメインとARR1のレシーバードメイン間でなされることを明らかにした。さらにHPtからARR1へのリン酸基転移を証明した。後者のTCPドメインは最近注目されはじめた機能ドメインで、側芽の成長や花器官の対象性に関与する遺伝子の例が知られている。 2)かずさDNA研究所との共同研究により、AHP、AHKおよびTCP遺伝子のノックアウト変異株の検索に着手した。
|