研究概要 |
本研究は科学研究費特定領域研究(A)「古典学の再構築」の公募研究として「原典班」に属して行われた研究である。研究の目的は、中国古典が18世紀〜19世紀の西洋近代哲学者たちによってどのように受容されてきたかの通時的実証研究である。全体の方向性は東西の哲学的影響関係の研究ということであるが、その間にあって、中国哲学情報を西洋にもたらした媒介的資料についての解明が本研究の一つの重要な柱である。媒介資料として重要なものに、『イエズス会宣教師による外国伝道に関する教訓的かつ興味深き書簡集〔"Lettres Edifiantes et Curieuses,Ecrites des Mission Etrangers,par Quelque Missionnaires de la Compagnie.de Jesus"〕』全三四巻、および『北京の宣教師による中国の歴史・学問・技術・道徳および慣習に関する紀要〔"Memoires sur Concernant l'Histoire,les Science,les Arts,les Mceures,les Usages,etc.par Missionnaires de Pekin"〕』全十六巻の二資料がある。本研究ではまずこれらの資料の精査を行い、関係する論文を抽出し、引き続きそれを受けた西洋哲学者の側の理解のあり方について検討を行った。そうした哲学者を一応挙げると、ライプニッツ、ヴォルテール、ディドロ、カント、ヘーゲル、そして二十世紀に及ぶが、マックス・ウェーバー、ユング、ヤスパース、ハイデッガー等である。研究の実際のプロセスはこれらの哲学者について、それぞれ並行して進めたが、現在の所やはり研究の深度には深浅が出てきてしまった。ただし、そのうちヘーゲルに関しては、その『老子』受容の問題について研究がある程度まとまったので、これを論文化し、現在『古典学の現在』に投稿中である。
|