研究課題/領域番号 |
11164230
|
研究種目 |
特定領域研究(A)
|
配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
人文・社会系
|
研究機関 | 東京大学 (2000) 三重大学 (1999) |
研究代表者 |
斉藤 明 (斎藤 明) 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (80170489)
|
研究期間 (年度) |
1999 – 2000
|
研究課題ステータス |
完了 (2000年度)
|
配分額 *注記 |
3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
2000年度: 1,500千円 (直接経費: 1,500千円)
1999年度: 1,500千円 (直接経費: 1,500千円)
|
キーワード | シャーンティデーヴァ / 『入菩薩行論』 / ジュニャーナシュリーミトラ / 有形象論者 / 『入菩薩行論解説[細疏]』 |
研究概要 |
敦煌本『入菩薩行論』は、シャーンティデーヴァの主著『入菩薩(菩提)行論』の最初期の形態を伝えるもので、現在では、敦煌出土のチベット語文献の中にのみ-チベット語訳として-その存在が確認されている。研究代表者は、この2年間の研究をもとに、本書の特色、初期本と現行本の相違点、ならびにこの初期本を同定するに至った研究経過等について、2000年9月の第4回公開シンポジウム「現代世界と古典学」において、「シャーンティデーヴァ作『入菩薩行論』の伝承と変容-初期本テキストの発見秘話-」と題して研究報告を行なった(『古典学再構築』第8号,2000.11,pp.11-19所収)。 また今年度は、11世紀初頭に活躍したジュニャーナシュリーミトラが、その『有形象証明論』に同書の一詩頌を引き、シャーンティデーヴァを「有形象論者」と見なしている事実に着目し、その思想史的な背景を考察した。この点については、第36回国際アジア・北アフリカ研究会議(2000.8.27-9.2於モントリオール)において研究発表した。 『入菩薩(菩提)行論』は従来、プラジュニャーカラマティ(10C後半〜11C前半頃)による注釈の多大な影響のもとに、チャンドラキールティ(c.600-650)に引き寄せて解釈される傾向が強かった。これに対して本研究は、初期本(8世紀前半)の内容と著者不明の『入菩薩行論解説』の注釈内容、ならびに先にふれたジュニャーナシュリーによる「有形象論者」としてのシャーンティデーヴァ理解等を検討することにより、8世紀から11世紀初頭にかけての同論の伝承および受容上の特色を明らかにした。すなわち同論は、中観派独自の菩薩戒(菩薩律儀)を説く論書として一貫して重要視されながらも、とくにこの時期には、当時ならではの思想史的な問題関心-認識対象の外在性を認めるか否か、認識対象を内なる形象と理解したうえでその真実性を認めるか否か、という主として認識論上の関心-を色濃く反映するかたちで伝承され、論議の対象となっていたという点である。
|