研究課題/領域番号 |
11164255
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研究種目 |
特定領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
人文・社会系
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
木下 鉄矢 岡山大学, 文学部, 教授 (40127072)
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研究期間 (年度) |
1999 – 2000
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研究課題ステータス |
完了 (2000年度)
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配分額 *注記 |
3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
2000年度: 1,500千円 (直接経費: 1,500千円)
1999年度: 1,500千円 (直接経費: 1,500千円)
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キーワード | 自己意識 / 単独者 / 参加責任 / 鏡 / 眼力 / 知性 / 明 / 己 / 予 / 爲(為) / 一人称代名詞 / 天 / 与格 / 自我意識 |
研究概要 |
1、昨年度に引き続き『論語』に現れる第一人称代名詞「予(われ)」についての研究を進め、この代名詞が何らかの不運や窮地(例えば病気、自らの死、最愛の弟子の死、他者の暴力にさらされる、など)に孔子が陥った中で「天」に対して視線が向かい、「天」をそのような不運、窮地を超えて対峙する相手として呼び出すに至る、という特異な状況において、特に自らを表す語として現れることを観察し、これを孔子の自己意識の領野における「単独者」としての自己了解にもとづく自己意識の領域の存在に連合している代名詞であると結論付けた。さらにこれと関わって、『論語』に現れる「己」について研究を進め、この「己」なる語が、その意味合いと使用状況によって、『論語』においてはおおよそ三つの群に分けることが出来ることを見出した。さらに意味的には、「為政者」としての自らの職務をあらわし、国家的意識・価値よりの規制の観点から見られている「己」と、自らの行為、価値判断において基準を与え、始点となっているような主体性の在り処としての「己」とに分析できることを見出した。この「己」の意味について解明されたところを、先の「予」についての解明に、さらに『論語』において一般的である第一人称代名詞「吾」「我」には「人の一人として埋もれ働いている自己意識」が連動しているとの考察に、関連させ、具体的な『論語』テキストの解読より、『論語』における「孔子」なる人物の、立体的な、「参加責任(アンガージュマン)」の意識に起動している、彫りの深い自己意識を見出すに至った。 2、南宋・朱熹などのテキストに見出される「照」「明」についての意味の二面性、自光体についても言われ、鏡についても言われる、という二面性を手がかりに、儒教系古典、特に『書経』『詩経』における「明」なる語の研究を進めた。特にこれらにおいては、「明」なる語は帝王の最も重要な資質を表す語として用いられており、その適切な意味理解は、これらの儒教系古典の核心となっている中国文明の実現者としての国家及びその主催者である帝王への規定が如何なるものであるかを解明する際に極めて重要な寄与をなすものである。「明」なる語は『詩経』においては自光体における「明」である例が多く、『書経』においては鏡における「明」の意味合いが基本となっていることを本研究は見出した。さらに『書経』においては、帝王についてこの「明」が筆頭の資質をあらわす語として多用され、それが結局は物事の真実をくまなく見て取る眼力、すなわち曇りなき「知性」にあることを分析し出した。
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