研究概要 |
本研究の目的は、いまだ未開拓である室町期の五山文学の一分野である「禅林聯句」において、外国文化(禅思想や漢文学など)がどのよな形で影響を与えているかを解明することにある。五山文学の特性として詩文中に認められる禅的発想と博引旁証の微底については、具体的様相を比較できる段階ではないが、禅林聯句の中においても認められる。 作品集の整理の方面においては、禅林聯句の総集『梅花無尽蔵(句集)』(内閣文庫所蔵),『〔聯句集〕』(足利学校遺跡図書館所蔵),京大平松本I・II『聯句集』(京都大学・平松文庫所蔵)の四集に収められる聯句を整理した。作品集の構成が判明した結果、例えば四集間における重複作品の分布の実態が一覧表化された。また、総集四集において、禅林聯句の別集として処遇されているのが「江東避乱聯句」(仮称),『九千句(城西聯句)』,『三千句』であることも判明した。三集が、禅林聯句の作例の規範として、禅林内外で重要視されていたようである。 そこで、禅林聯句の代表として「江東避乱聯句」を特別に取り上げ、作品内容の具体的検討を行うための基礎作業も進めている。抄物としての『〔湯山聯句〕』(大谷大学図書館所蔵)と『成吠詩集』(竜谷大学図書館所蔵)を中心に、総集四集をも勘案し、当該「江東避乱聯句」を特定し、本文と抄文を固定することである。いくつかの難問題があり、難航はしているが、やがて成稿とすることができよう。聯句の解釈法いついては、新しい解釈法の完成を目指して試行を重ねている。
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