研究概要 |
本研究は、ユーラシア大陸のオアシス地帯およびその北方の草原地域に,伝播した仏教・仏典についての研究である。具体的には,シルクロードの商業民族であったイラン系のソグド人の仏教信仰とそれを反映する仏典及びその原典の究明,さらには遊牧民族であったウイグル族及びモンゴル族に広まった仏典及びその導入経路についての追求をテーマとしている。特に最も有名な仏典の一つであるヴェッサンタラジャータカを例にとり,ソグド語・ウイグル語・モンゴル語訳の間の相違を研究し,その3訳にのみ共通し,他の言語の版には見られない特徴があることを明らかにした。それにより,この地域で大衆化したテキストの脱大衆化の実態と,伝播のありかたの一端が解明されたと考える。さらにヴェッサンタラジャータカはそのポピュラーさのために,非常に多く図像が残されている。これら壁画やレリーフ等の図像資料の収集と分類・整理も行った。それにより図像化の基礎となった仏典を特定できる場合があることを確認した。
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