研究概要 |
カーボンナノチューブおよび窒化ホウ素(BN)ナノチューブの合成と構造評価,カーボンナノチューブからの電界放出の解明,これを使ったディスプレイ用電子源の開発などを実施し,以下の成果を得た。 1.単層カーボンナノチューブ(SWCNT)の大量合成と直径制御 アーク放電法によるSWCNTの多量合成に有効な触媒を探索し,Rh-Pt,La-Ni,Ce-Niなどの二元金属が高い触媒能を有することを見出した。また,ナノチューブの直径に関して,アーク放電のヘリウム圧の減少とともにチューブ径が小さくなり,ヘリウム圧力範囲が50Torrから1520Torrまでのとき,平均直径を1.02nmから1.5nmの範囲で制御できる事が分かった。 2.多層カーボンナノチューブ(MWCNT)の成長と構造に及ぼす雰囲気ガスの効果 酸素および空気中のアーク放電法においても,MWCNTが成長することを見い出すとともに,副生成物が少ない純度の高い試料が得られる事を明らかにした。 3.BNナノチューブの合成と構造評価 窒素ガス中でホウ化ジルコニウムをアーク放電で蒸発することにより,BNナノチューブを得る事に成功し,奇数員環の存在を示唆する特有の先端構造を見い出した。 4.カーボンナノチューブからの電界放出とディスプレイ用電子源への応用 先端の閉じたMWCNTの清浄表面からの電界放出は,ナノチューブ先端の五員環から優先的に起こる事を見い出し,さらに隣接する五員環から放出された電子波の間の干渉を観察した。また,吸着分子により引き起こされる放出電子の変動,雰囲気ガスのナノチューブエミッタの寿命に及ぼす影響も明らかにした。これらの研究成果を発展させ,ナノチューブを電子源とする発光型ディスプレイの開発も行った。
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