研究概要 |
フラーレン及びナノチューブに様々な物質を添加してドーピング化合物を作製し、熱処理条件の変化、加圧、異種元素の同時添加あるいは薄膜化による挿入原子の位置制御を試み、X線回折、電気抵抗測定及び磁化・磁化率測定により新奇物性を探索した。 (1)K_xC_<70>(x=1,2,3,4,6.9)を作製し、x=3,4,9は金属相、x=1,2,6は絶縁相であることを明らかにした。x≒3は超伝導転移を0.5Kに持つが、他の相は40mKまで超伝導に転移しないことが分かった。 (2)Na_xC_<70>について、1≦x≦8は面心立方晶であるが、Na飽和相Na_<11>C_<70>は単純立方晶であることがわかった。x=8,11は金属相であるが、2K以上に超伝導転移を持たなかった。 (3)Li_xC_<70>について、Li飽和相はLi_<14>C_<70>であり面心斜方構造をとる絶縁体であること、またLi_xC_<70>(1≦x<14)は面心立方構造をとることが分かった。また室温下での加圧によりLi_<14>C_<70>が作製した。 (4)その他のC_<70>化合物については、C_<70>S_x(x=48,16)の他、新たにMg_xC_<70>の作製に成功した。 (5)C_<60>化合物については、新たにLi_xC_<60>の超伝導を8.8Kで見出し、Mg_xC_<60>の新規作製に成功した。 (6)単層カーボンナノチューブについて、K添加および水素吸蔵による物性変化を調べたが、チューブに含まれる多量の強磁性不純物のため、良いデータは得られなかった。 (7)K_xC_<70>について、圧力と温度を変化させてX線回折実験を行ったが、顕著な構造相転移は見出せなかった。またCs_3C_<60>の高圧下の超伝導を探索した。 (8)クライオスタット付き超高真空蒸着装置を製作して走査トンネル顕微鏡を組み込み、元素添加に伴うフラーレン薄膜の電気抵抗の測定及び原子位置変化とエネルギーギャップの観察を試みたが、現在まで良い成果は得られていない。 (1)、(2)、(3)の一部は論文発表済み、他は現在、投稿中及び準備中である。
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