研究概要 |
パラジウム錯体触媒を用いるアリルエステル類と種々の求核剤との反応は,遷移金属錯体触媒反応のうち最も重要な反応の一つである。反応はπ-アリルパラジウム中間体を経由し,安定化炭素アニオン,アミンなどの求核剤が用いられている。我々は14族元素化合物の触媒的活性化反応研究の一環として,ケイ素の強い酵素親和性を活用するシリル化,シアノ化,ならびにアシル化反応の開発に成功した。これはアリル位に導入する官能基をケイ素基に結合させておき,反応によって結合エネルギーの大きいケイ素-酵素結合が出来ると同時に,官能基をアリル位に導入するというものである。ジシラン,シリルシアニド,そしてアシルシランを用いた場合に,シリル基,シアノ基,そしてアシル基をアリル位に導入できることを明らかにした。この反応においては,より有用な官能基がアリル位に導入することが可能になると極めて興味深い。アシル基はそれ自身親電子的であるため,求核的なアシル基は発生させるのが極めて困難であった。我々はケイ素基に直接アシル基を結合させたいわゆるアシルシランをアシル化剤に用いる新規アリル位アシル化反応を開発した。反応にはトリフルオロ酢酸のアリルエステルが基質として高い反応性を示し,対応する酢酸エステルでは全く反応しなかった。RB3LYP/6-31+G(2d,p)//RB3LYP/6-31G(d)で見積もったケイ素の酵素親和力と触媒反応性について明らかにした。
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