研究概要 |
空間的に近い位置に複数のセレン原子等を有する有機カルコゲン化合物のハロゲン付加体は、新規な結合様式、構造、反応性および機能を有する低次元長鎖状結合を構成することが期待される。ナフタレンの1-位にSe原子を8-位に置換基Gを有する8-G-1-(p-YC_6H_4Se)C_<10>H_6をモデル化合物とした場合、Se原子周辺の配座は、3種類(typeA,typeB,typeC)に大別して論議できる。 今回、本課題の目的を達成する第一歩として、1-(MeSe)-8-(p-YC_6H_5Se)C_<10>H_6(2:a(Y=H),b(Ome),c(Me),d(Cl),e(Br),f(COOMe),g(NO_2))を合成した。1aにおける両Se原子周辺の配座は、typeC-typeC pairingである。これらの事実を踏まえて1bおよび1dにおけるSe---Se非結合相互作用をX線結晶構造解析法および非経験的分子軌道法を用いて詳細に検討した。その結果、1bおよび1dの構造は、pseudo-およびpure typeA-typeB pairingとして分類できることを証明した。 これらの構造におけるSe---Se非結合相互作用を詳細に検討するため、H_2Se---SeH_2(model a:Scheme3)およびC_<10>H_6-1,8-(SeH)_2(2)をモデルとし、ab initio MO計算を行った。最適化された配座をA-Dで示した(例えば、2では2A,2B,2Dが安定配座(2Dが最安定)であるが、2Cは鞍点)。計算の結果、配座Aは、σ(Se---Se)の結合エネルギーがもっとも大きくなる構造に由来する。同様に配座BはHOMO支配であり、π^*(Se---Se)のエネルギーが最も安定となる構造に対応し、一方配座DはHOMO-LUMO支配であり、CT(n(Se)---σ^*(Se-H))の寄与が最大となる構造に対応すると結論した。
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