配分額 *注記 |
16,800千円 (直接経費: 16,800千円)
2002年度: 4,300千円 (直接経費: 4,300千円)
2001年度: 4,600千円 (直接経費: 4,600千円)
2000年度: 4,600千円 (直接経費: 4,600千円)
1999年度: 3,300千円 (直接経費: 3,300千円)
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研究概要 |
本研究では人工膵臓機能を持った分子シンクロデバイスの開発を行なってきている.デバイスの開発指針としては皮下に埋入しても生体反応を回避できるマテリアルの創製と,これを用いたインスリンリザーバーの作製,および分子シンクロ技術を利用した血糖値応答型のインスリン放出ポリマーシステムの構築を基盤要素として研究し,これらを組み合わせることとした.生体適合性,血液適合性に優れたリン脂質ポリマー(MPCポリマー)とセグメント化ポリウレタン(SPU)よりポリマーブレンド溶液を調製し、溶媒蒸発法にて膜厚30μm程度の膜を作製した,このSPU/MPCポリマーアロイ膜の表面には10-30μm程度のMPCポリマードメインが観察された.MPCポリマー組成が高い程、ポリマーアロイ膜の含水率は高くなり、拡散によるグルコース、インスリンの透過性が向上した.このような特性は、ポリマー膜内部へMPCポリマードメインが連続的に形成されていることに起因し、MPCポリマー組成が高い程、透過経路が効果的に形成されたと考えられる.引っ張り試験による機械的特性評価から、SPU/MPCポリマーアロイ膜はこれまで生体軟組織の代替マテリアルとして広く応用されてきたシリコーンよりも高い機械的特性を有することがわかった.ポリマーアロイ膜を加熱により成形加工、接合することで容易に人工膵臓パッケージ試作ができた.さらにポリマーアロイ膜はSPU膜に比較して、マウスの皮下組織への埋込み実験において、8週間にわたり皮下組織からの拒絶反応を抑制し、カプセル化反応を劇的に低減させた.これは生体適合性を示したのと同時に、デバイス-体液間での安定したグルコース、インスリンの交換界面を形成できることを示唆する.Poly(MPC)ハイドロゲルを浸漬したグルコース酸化酵素(GOD)水溶液(1.0mg/mL)にグルコースを添加し、食後の高血糖状態に値する200mg/dLにまでグルコース濃度を上昇させたとき、その溶液中には0.039mgのPoly(MPC)が分解した.これはゲルの表面2μmが浸食されたことを示す.すなわち、ゲルマトリックス中に、インスリンを内包したナノスフィアーを分散させることで、グルコース濃度の上昇に応じてインスリンを放出するシステムの構築が可能であることが、本結果によって示された.さらに、生体内埋込み可能なポリマー膜との融合により,生体内埋込型デバイス創製への研究展開が期待される.
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