研究課題
特定領域研究
SPOC(自発的振動収縮)は外部力学刺激に同調する:骨格筋筋原線維(ウサギ腸腰筋をグリセリン処理して調製;長さ数十μm、太さ数μm)の両端をガラス微小針に固定したのち、SPOC条件にし自発的な振動(SPOC)を生じさせる。一方のガラス針は柔らかく、これの撓みから発生張力とその振動を記録することができる。もう一方の硬い針にはピエゾ素子が装着されていて、任意の波形で筋原線維の長さを変えることができる。そこで、半筋節あたり10nm(分子モーターのサイズ)程度のステップで長さを急激に変動したところ、これにシンクロして全ての筋節が一斉に伸びること、したがって外部力学刺激に対して長さ振動がシンクロすることが分かった。しかも、自発的には振動していない条件(ATP、ADP、Pi共存、Caイオン非共存というSPOC溶液条件から無機リン酸Piイオンを除去し、ADPの添加によって収縮条件にしたもの)で硬い針を振動させたところ、これにシンクロして筋原線維が振動することも見出された。これらの結果は、分子モーターという力学酵素における力と酵素活性とのカップリングの本質を捉えたものと考えられる(論文準備中)。キネシン分子モーターの"歩く"仕組み:我々が開発した温度パルス顕微鏡法を用いて、キネシンの歩行速度に対する温度の効果を従来の温度領域を越えて50℃まで測定し、このような高温においても短時間であれは酵素活性は正常に保たれていることが明らかになった。さらに、キネシンと微小管との1分子結合力を計測し、微小管のプラス端側に負荷を加える方がマイナス端側に負荷を加えるよりも破断力が小さいこと、その際の見かけのADP結合能が前者の方が大きいことが分かった。このことは、酵素活性が負荷の向きに依存することを意味し、キネシンという力学酵素の本質が明らかになった(論文準備中)。
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