研究概要 |
ザリガニ腹部最終神経節は尾扇肢運動制御の場であり、尾部への機械的接触感覚情報は上行性介在ニューロン・スパイキング局在ニューロン・ノンスパイキング介在ニューロンによって構成される局所回路を通じて尾扇肢運動ニューロンに伝達される。この局所回路における主要抑制経路としては、(1)スパイキング局在ニューロンからノンスパイキング介在ニューロンへの(2)ノンスパイキング介在ニューロンから尾扇肢運動ニューロンへの(3)ノンスパイキング介在ニューロン間の抑制性接続があり、(4)また一部の上行性介在ニューロン間でも抑制性シナプスが形成されている。GABA作動性・グルタミン酸作動性ニューロンによって形成される並列的抑制経路の機能的意義を解明するため、本年度はGABA作動性シナプス抑制効果を主に解析した。GABA作動性ニューロンの同定 細胞内染色―抗GABA免疫組織化学染色の二重ラベル法を用い、ザリガニ腹部最終神経節に存在する約35対のGABA作動性ニューロンの同定を試みた。Flexor inhibitor, uropod common inhibitorを含む5対の運動ニューロン、1対のLDS、約10対のPLタイプ・2対のAL-Iタイプ・少なくとも5対のAL-IIタイプのノンスパイキング介在ニューロン及び6対の上行性介在ニューロンがGABA作動性ニューロンであることを確認したが、スパイキング局在ニューロンは一切GABA抗体に対し陽性反応を示さなかった。GABAに対する局所回路ニューロンの応答 ニューロパイル内GABA局所微量投与に対する尾扇肢運動ニューロン・ノンスパイキング介在ニューロンの応答を電気生理学・薬理学的に解析した。GABA投与によってこれらのニューロンは膜過分極を示したが、クロライドチャネルブロッカーであるピクロトキシン(PTX)介在下においてGABAに対する運動ニューロンの応答に変化は見られなかった。また、ノンスパイキング介在ニューロンはその応答性の違いから、PTX-sensitive, PTX-insesitive, extraordinaryの3タイプに分けることができた。
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