研究概要 |
本研究は知覚情報がショウジョウバエの脳内でどのような回路を通って処理されるのかを神経回路網レベルで明らかにし、情報処理統合システムの機構を解明することを目的とし、Green Fluorescent Protein(GFP)とその派生物(YFP,CFP)、カルシウム感受性蛍光タンパク質プローブ(cameleon)と電位依存性の蛍光タンパク質プローブ(FlaSh)のtransgenic flyを作成し、ショウジョウバエのエンハンサートラップラインと掛け合わせることにより細胞特異的に発現を行い、in vivoで神経細胞の興奮の指標となる膜電位と細胞内のカルシウムを測定することにより知覚回路の同定を試みた。その結果、GFP,YFP,CFP,yellow cameleon2(YC2)およびFlaShのtransgenic flyを作成できた。GFP,YFP,CFPによりin vivoで神経細胞を同定できるようになった。またpH感受性があるYFPを細胞特異的に発現させることによりin vivoでの細胞内のpHの変化を測定することができた。YC2を発現させたハエは成虫にまでなったが、YC2自体のカルシウム感受性が低くin vivoでカルシウム変化を捕らえることはできなかった。次にYC2よりカルシウムに対して感受性が高いことが報告されていた改良型のyellow cameleon2.1(YC2.1)を用いて実験を行った。まずHEK293にtransfectionしてYC2.1のカルシウムに対する容量反応性を検討した。その結果YC2.1では数μMから蛍光変化が捕らえられ、YC2より約1000倍感度が高いことがわかった。そこでYC2.1のtransgenic flyを作成しin vivoでの実験を行ったが、YC2.1を用いても神経細胞の細胞内カルシウムの上昇を捕らえられることはできなかった。最後にFlaShであるがFlaShを発現させたハエは幼虫の時期に死滅してしまい、成虫になるもには得られなかった。現在、cameleonとは別のカルシウム感受性蛍光タンパク質プローブであるCamgarooを用いてカルシウムの測定を行いつつある。
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