研究概要 |
真核生物におけるプロテアソームは、細胞内で不要になったタンパク質を速やかに分解し、細胞機能を安定に保ち細胞周期の調節を担う分子量75万の巨大な非リソソーム系細胞内プロテアーゼである。また、プロテアソーム活性化因子PA28が結合し複合体を形成することによりタンパク質を特異的に認識・選別し、ペプチド生成による抗原提示機構をも併せて持つ免疫応答系の超分子集合体として機能する。本研究ではこの超分子系の中でタンパク分解を担当するプロテアソームの認識・選別および複合体形成機構を3次元立体構造から明らかにすることを目的とした。 牛肝臓から抽出したプロテアソームをMPDを沈殿剤として結晶化を行い、SPring-8大型放射光施設で回折実験を行った。以前得られていた結晶(Y.Morimoto,et.al.J.B.117,471-474(1995))とは異なる晶系の結晶が得られ、同じ精製方法、結晶化であるにも関わらず異なる晶系、格子長の変化は、プロテアソームの分子状態(サブユニットの均一性、同一性など)が異なるものと考えられた(Y.Tomisugi,et.al.J.B.127,941-943(2000))。この結晶は比較的分解能が高い(3Å)の回折データを与えたことから、複数の結晶を用いて完全なNativeデータを収集する事ができた。酵母プロテアソームをモデルとした分子置換法により解析を行い、2.5分解能での構造を決定した。14種類のサブユニットの配置など本質的な立体構造の違いは見られなかったが、牛肝臓プロテアソームに特有と見られる粒子内の塩基性アミノ酸残基の分布などが見られた。これらのことをより一層正確にみるために、composite-omit mapをはじめとする電子密度図を計算し、現在モデル構築、修正、精密化を行っている。
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