研究概要 |
本研究課題は、前頭前野神経回路をモデル化し、そのコンピュータ・シミュレーションを行うことによって、ワーキングメモリの形成に関する回路メカニズムを解明することを目的とした。本研究で用いる前頭前野神経回路モデルは、解剖学データにできる限り取り忠実なアーキテクチャを実現している(Tanaka and Okada1999;Tanaka1999,2001)。ニューロン・モデルは統合発火型で、AMPA,NMDA,GABA_Aの各イオン・チャネルを有している。 入力層のpyramidal cellsは信号入力に対して一過性の応答を示し、持続層のpyramidal cellsは遅延活動を示す。遅延活動は方向選択性をもっており、遅延期間において安定して持続する。この活動はAMPA and/or NMDAチャネルの遮断、または局所抑制の増強により消失する(Tanaka2000a,b)。 次に、後シナプス電流すなわちニューロンのシナプス入力の時間空間特性を解析した。その際に後シナプス電流(PSC)をEPSCとIPSCに分けて、さらにEPSCを同じ層内の他のpyramidal cellsによるものと異なる層のpyramidal cellsによるものの2つの成分に分けた。IPSCは同方向抑制と反方向抑制を区別した。解析の結果、次の4つの回路メカニズムを特定することができた(Tanaka and Yoshida2001): 1)外部信号入力が入力層から持続層へと伝えられるfeedforward excitation 2)信号が持続層で増幅されるrecurrent excitation 3)持続層における活動の水平方向の広がりを制限するrecurrent inhibition 4)入力層の一過性の活動を実現するfeedback inhibition
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