研究課題
特定領域研究
微生物由来のポリヒドロキシアルカン酸(PHA)は、また、環境中の微生物により分解、資化されるため、環境低負荷型プラスチックとして注目を集めている。本研究はPHAの構造と物性の相関を明らかにすることを目的に進められた。一次構造と化学組成分布、それに高次構造が絡み合って物性を決定しているという階層性構造の複雑さを鑑みて、平衡結晶化後の構造解析のみならず構造形成(結晶化)過程の解析まで総合的に行うことが重要であるとの考えより、本研究では多種類のPHAの解析よりも一種類のPHA共重合体、すなわち、ポリ(3-ヒドロキシブタン酸-co-3-ヒドロキシペンタン酸)(PHB-HV)の広範囲の解析を優先した。これにより、本研究の成果として以下のような事が明らかとなった。1.平行結晶化後のPHB-HVの構造解析より、HV組成10%付近で特異的な高次構造転移が起こること。2.二分散性の化学組成分布を持つPHB-HVの構造解析より、分布ピークの組成差の増大、あるいは、結晶化温度の低下につれて、各組成の成分の完全共結晶化から、低HV分率成分の優先結晶化、相分離に伴う各成分の独立結晶化へと結晶相構造が変化すること。また、このような構造変化は物性に多大な影響を与えること。3.二分散性PHB-HVの結晶化過程の解析より、組成差が小さい場合には、各成分の結晶化速度の類似性を起動力として両成分が同時に結晶成長面に取り込まれて共結晶化が起きること。一方、結晶化速度が比較的離れている場合には、結晶化の速い成分が先にラメラ晶を形成し、結晶化の遅い成分はその間にトラップされ、遅れて微小結晶相を形成すること。以上のように、本研究により、PHB-HVの階層構造の形成機構、及び、それに対する環境条件の影響を総合的に明らかにすることができた。また、結晶化条件によって物性が変化する機構も明らかとなった。
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