研究課題
特定領域研究
小型で世代時間が短い等といったメダカ本来の特徴に加え、長年日本人が培った遺伝学的知見の蓄積等により、メダカが実験生物モデルとして重要視されている。本課題では、モデルとしてのメダカの重要性をより高め、より使いやすいものとするため、遺伝子改変技術という側面からメダカの実験基盤整備を目的とした。本課題で得られた成果は、以下の通りである。1)簡便な遺伝子導入技術の開発:遺伝子導入手段として顕微注入法が一般的であるが、これには独特の技術を必要とする。そこでより簡便な方法として、遺伝子銃を用いた方法をメダカに適応し、その至適条件を決定した。また、本法で作出された遺伝子導入メダカの形質が5世代以上にわたって安定に受け継がれることを証明した。2)簡便な遺伝子導入系統樹立法の開発:遺伝子導入処理を施したメダカから、導入遺伝子を生殖細胞系列に持つものを選抜することは、非常な労力と忍耐を必要とする。これを軽減するために生殖系列の細胞に特異的に発現するvasa遺伝子の発現制御領域を利用した、早期に、容易にできる選抜法を開発した。また、この過程で、vasa遺伝子3'非翻訳領域に生殖細胞特異的な翻訳制御を支配するエレメントがあることを明らかにした。3)導入遺伝子発現調節法の開発:近傍の塩基配列による、導入遺伝子の発現への影響を抑えるために、ウニ由来のインシュレーター配列がメダカでも有効であることを証明した。また、一本のmRNAから、複数の独立した翻訳産物を作るIRES作用を持つ約200塩基配列を発見した。メダカ個体内でCre-LoxPシステムを用いて遺伝子の人為的発現が可能なことを示した。4)蛍光標識を持つメダカ系統の作出:骨格筋、生殖細胞、肝臓、ほぼ全組織、神経に緑色または赤色蛍光を有するメダカ系統を作出した。これらの系統は、遺伝子発現解析等に有効な材料となる。
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