研究課題
特定領域研究
これまでに出芽酵母DNAポリメラーゼεとその部分複合体Dpb3p-Dpb4pが二本鎖DNA結合能を有することを示した。Dpb3p-Dpb4p複合体はヒストン様のヘテロ二量体であり、Polεとクロマチンの相互作用に関わることが示唆される。Polεの二本鎖DNA結合能の細胞内での役割を明らかにする目的で研究を行い、平成15年度は以下のことを明らかにした。(1)DNAポリメラーゼεの二本鎖DNA結合能はDpb3p-Dpb4p複合体に担われている。ヘテロ二量体形成は正常であるが、二本鎖DNA結合能が低下するアミノ酸置換型Dpb3pおよびDpb4pを分離し、それらを含む変異型Polεを精製したところ、そのサブユニット構成、複合体の安定性、およびDNAポリメラーゼ活性はすべて野生型Polεのそれと同じであった。一方、これら変異型Polεの二本鎖DNA結合能は野生型に比べ顕著に低下していた。以上の結果より、Polεの二本鎖DNA結合能は確かにDpb3p-Dpb4p部分複合体に担われていることが示された。(2)DNAポリメラーゼεの二本鎖DNA結合能の役割本特定領域の荒木ら(国立遺伝学研究所)により、dpb3欠損株においてはテロメア近傍領域の遺伝子サイレンシングの状況が野生型の場合と著しく異なることが報告された。通常何世代にも渡ってエピジェネティックに維持されるサイレンシングの状態(転写抑制の状態)が、この株では安定に維持されない。そこで、二本鎖DNA結合能が低下したPolεを産生するdpb3(K18D)変異株におけるテロメア近傍領域のサイレンシングを調べたところ、dpb3欠損株と同様の異常が観察された。この結果はPolεの二本鎖DNA結合能がテロメア領域におけるヘテロクロマチン形成に関わる機能である可能性を示唆するものである。Polεはテロメア領域の複製とヘテロクロマチン形成を共役させる働きを持つのかもしれない。
すべて その他
すべて 文献書誌 (4件)