研究概要 |
本研究は社会政策との関連における日本人の価値意識や社会的態度の構造を明らかにすることを目的として開始された.1999(平成11)年度は先行研究のサーベイを実施しながら,作業仮説の形成と調査票の確定を行った.そのうえでプリテストを実施し,5000サンプルの全国調査を実施した.基本的なフェースシート項目に加えて,利他性,公共支出への態度,政府責任に関する意見,福祉国家の基本的な価値に対する態度(高福祉,必要原則,普遍性,公私関係,権利性等々),ポストマテリアル尺度,ジェンダー尺度,貧困に関する認知度,リスク意識,雇用関連意識,奨学員の配分基準,医療や介護に関する態度,女性の就労形態,結婚観,平等不平等感,等々の変数が組み込まれた.2000(平成12)年度は,初年度に実施した調査の解析と,社会政策のなかの健康に焦点を当てた補充調査を実施した.後者の調査は2000サンプルの全国調査であり,主観的健康,慢性疾患,通院日数,生活満足度(仕事,余暇,家庭生活,家計,人間関係,居住関係),住宅状況,資産保有状況,家族状況等々の変数を扱った.2001(平成13)年度は,二つの調査データの解析を進めるとともに,福祉国家の基本的な価値に対する態度について追跡調査を行った.データ解析の結果明らかとなった点を例示すると以下のとおりである.伝統的福祉国家の価値とみなされる高福祉,必要,普遍,公共といった志向性が必ずしも,一貫性をもって支持されていない.地域格差是正の意見に対しては居住地域だけでなく階層的な要因も影響を及ぼしている.雇用保険や失業対策,育児・子育て支援などについてはジェンダー間の差が見られたが,医療保障や高齢者保障,環境問題などではジェンダー差が見られなかった.SRH(主観的健康)については,社会経済的な格差がみられた.
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