研究概要 |
15属元素ポルフィリン錯体の展開:RPCl_2と(OEP)H_2の反応で,[(OEP)P(R)(OH)]^+Cl^-(10)と(OEP)PR(=O)(1)が平衡混合物として得られることを見出した.10のOH基のプロトンは酸性が高く,pHを調整することで10と1を選択的に単離できた.1のX線構造解析でP=O二重結合が存在することを確認した.ヒ素についても,[(OEP)As(R)(OH)]^+X^-(13)の合成を確立し,これを塩基で処理して(OEP)As(R)(=O)(14)を得た.13はX線構造解析により,はじめて完全に同定されたヒ素ポルフィリン錯体である.13と14の間にもリンと同様の平衡が存在することを確認し,13のプロトンの酸性度は10よりも低いことをNMRから明らかにした.10や13のプロトンの酸性度が高いことを利用して,ヘテロ二核錯体のμ-オキソ積層ポルフィリン[(OEP)Al-O-E(OEP)(R)]ClO_4(E=P,As)を合成した.Sb錯体も光反応を用いて合成できることがわかった.積層ポルフィリンにおいて,光励起により分子内エキサイプレックスが生成することを示唆する結果を得た.また,Sb^V-TPP錯体について,Sbの電子状態が軸配位子の影響を強く受けることを^<121>Sbメスバウアー分光法から明らかにした. hypervalentな5配位炭素・ホウ素化合物の新展開:O_2C型3座配位子1,8-ジメトキシアントラセンを用いて,初めて5配位超原子価炭素化合物を合成・単離した.X線構造解析により,超原子価O-C-O結合の存在を確認し,さらに密度汎関数法(DFT)による計算からC-O原子間に結合的な相互作用が存在することを示した.同じ配位子を用いると,5配位超原子価ホウ素化合物もできることを示し,構造をX線から確認,DFT計算から結合相互作用を確認した.立体的によりflexibleなvan Koten型配位子を用いても,5配位超原子価炭素化学種を得ることができた. 5配位ホスホラン化学の展開:apicophilicity ruleに反する5配位リン化合物(2:O-cis体)を速度論的生成物として得た.2はO-trans体(3)よりも求核反応性が高いことを明らかにし,分子内配位子交換反応の機構に対する考察をした.また2の方が,αプロトンの酸性が高いことを見出し,そのアニオンとベンズアルデヒドの反応において6配位Wittig型反応の中間体の単離にも成功した.
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