研究概要 |
気相重合は、現在の汎用プラスチックスの主力プロセスであるが、30気圧、80-100℃の流動層中での流動・伝熱・反応が相互に深く関係した反応器内現象の制御については、従来定量的解明は不十分であった。本研究では、DEMシミュレーションと重合中の一個粒子の直接観察というまったく新しい方法論に基づいてこれらを一つ一つ明らかにし、より現実的な設計・開発理論の確立の端緒を開くことを目的とした。高温・高圧下でのポリプロピレン気相重合反応においては、重合反応熱がモノマー気流によって適切に除去される必要がある。この点についての理論的検討を、既往の反応速度式に基づき、離散粒子法(DEM)モデルを開発して行った。その結果、世界に先駆けて、ポリオレフィンの非等温反応系についての離散粒子シミュレーションに成功した。具体的知見としては、流動層においては、気泡の運動による粒子のランダムな混合が重要であり、いたずらに粒子層の循環を行うだけではホットスポットの形成を阻止できないことがわかった。結果は、Chem. Eng. Sci.54(1999)5809-5821,AIChE Symp. Ser. No.321,vol.95,1999に発表。さらに、ヘリカルリボン型反応器内粒子混合過程のDEMシミュレーションを行った(Powder Technology,108(2000)55-64発表)。次にポリマーの成長過程を直接観察するマイクロリアクター装置を開発し、画像解析により、個別粒子レベルでの反応挙動の直接解明を試み、重合時間とともにポリマーが中心の触媒を取り囲むようにして成長する様子のビデオ撮影に世界で初めて成功した。また、グレイン粒界拡散と結晶内拡散を考慮した反応モデルを展開し、粒径の経時変化の実測値を精度よく説明できた(化学工学会第65,66年会,Fluidization X, M. Kwauk and W.C.Yang(eds.), United Eng. Foundation, pp.589-596(2001)に発表)。さらに、赤外線熱画像装置を用いて粒子表面の温度分布の経時変化を測定し、粒子衝突時の粒子間伝熱の直接測定を行った。粒子衝突(接触)面の温度分布の測定は、粒子-サファイアガラス板衝突をサファイアガラス越しに観察することにより行った(Fluidization 2000, Xi'an Publishing House, pp.59-64に発表)。また、粒子間付着力の直接測定原理を常圧の場合について確立し、高圧反応条件での装置を試作した(粉体工学会で発表)。
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