研究概要 |
木材の湿気、水分、荷重、腐朽菌等に対する反応性を利用し,その特性を実際の製品に適用するために,1)吸放湿特性の拡大とその応用,2)含水率変化による2プライ積層材の反りの発生とその応用,3)荷重によって発生するたわみ量の制御(剛性自己変化機能の付与)とその応用について研究した。 1)では,板材に種々の機械加工を施し,表面積を増大させ,湿度変化に対する吸放湿の応答性を比較した。この結果,表面積を増大させない板材よりも増大させた板材が吸放湿の反応が速かった。そこで,木材を壁面材料とする空間をつくり,空間内と外気の温・湿度の変化を測定した。両者間の温度に差はないが,湿度は外気で大きく変化するのに対して空間内ではほぼ安定した。しかし,表面積を増大させた板材と増大させない板材を壁面材料とした空間間では,明確な違いは認められなかった。 2)では,収縮率が異なる2枚の板材(HBと合板,HBとプラスチック,MDFと合板,MDFとプラスチック)を接着し,湿度変化に伴う反りと含水率の変化を測定した。板材の収縮率とヤング率から算出した反り(理論値)と実際に測定した反り(実験値)とでは実験値が小さく,木質材料では収縮率と膨張率に差異があることが示唆された。また,このような2プライ積層材の反りの,周辺の湿度条件によって自動開閉するルーバーへの応用を提案した。 3)では,荷重が増加してもたわみがほぼ一定になる材料,すなわち,荷重の増加とともにヤング率が増加する材料の開発を目的に,複数の板材を積層させ一つの材料とした積層タイプ,端部に固定ブロックを設置し張り出し部端部のはね上がり変形を抑制するタイプ,ヤング係数の高い材を外側にヤング係数の低い材を内側に積層接着し荷重方向を変化させた複合梁タイプの3つを試作し,荷重-たわみ関係を検討した。
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