研究概要 |
従来、細胞特異的遺伝子の同定にはsubtraction library法やdifferential hybridization法などが用いられてきたが、いずれも定量性に欠き、手技的な条件設定の困難さが残されている。そこで我々は、ヒトメサンギウム細胞について、より定量的で、なおかつ細胞特異的遺伝子を検出しやすいcDNAライブラリーの作製を考慮し、近年確立された3'-directed cDNA library法を起用した。 この独創的な分子生物学的アプローチによって、1)世界に先駆け、ヒトメサンギウム細胞に発現する遺伝子群の定量的解析を行い、細胞特性の一部を分子レベルで明らかにすることに成功し、その中から5つの未知のメサンギウム細胞特異的遺伝子(megsin,meg-1,-2,-3,-4と命名)の単離同定を行った。2)megsinはメサンギウム細胞に高発現し、既知のセリンプロテアーゼインヒビター(serpin)と高い相同性を有する未知の蛋白をコードする新規遺伝子で、メサンギウム増殖性IgA腎症でその発現が亢進する。3)meg-1,meg-2,meg-3,meg-4もmegsinと同様、ヒトのみならずラット、マウスなど種を越えてメサンギウム細胞に保存され、なおかつ高発現している新規遺伝子で、いずれも未知の蛋白を一つコードする。アミノ酸相同性や蛋白モチーフの検索からmeg-1はserine/threonin alkarine phosphatase4の調節ユニット,meg-3は高プロリンドメインを有する転写調節因子、meg-4はATP依存性metalloproteaseである可能性が示唆された。
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