研究概要 |
IP_3は、神経細胞内Ca_<2+>ストア膜のIP_3受容体に作用してストア内のCa2+を細胞質へ動員し、多彩な生理機能を制御する普遍的に重要なシグナル機能を持つ。IP_3シグナルの標的分子はIP_3受容体であり、IP_3感受性Ca_<2+>放出チャネルを開口するリガンドとして作用する。IP_3受容体による分子認識において、イノシトールリン酸の選択性は厳密で立体特異性も極めて高い。そこで申請者はIP_3結合部位の構造と機能の解析をすすめた。その結果IP_3R1のKd値は83nMであり、安定な結合配列として得たN末端の全配列2749アミノ酸のうち、1-604のアミノ酸配列のKd値は45nMであった。ところがN末端を欠除した224-604の配列はKd値が0.083nMと500〜1000倍高いIP_3結合親和性を示した。N末端はIP_3結合コアー領域(226-604)に対して、抑制的に働いていた。IP_3結合コアーでの結合にはアルギニンとリジンの三つのアミノ酸必須であり、その周辺にあるアミノ酸が1,4,5,IP_3のリン酸位の特異性を決定していた。これにより、IP_3結合ドメインは高い親和性を有する領域とそれを抑制する二つの領域を有するユニークな特異的構造を有することが明らかになった。
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