研究課題
基盤研究(B)
本研究は高齢ドライバーの安全性と痴呆症診断テストから見た認知能力の低下との関連をあきらかにし、高齢ドライバーの安全の施策を検討することを目的におこなわれた。安全性の指標として、ドライバー自身の主観的安全性の妥当性を指導員評価との差異の大きさに求めた。65歳以上の高齢ドライバーを含む198名のドライバーを対象に、運転行動の諸側面21項目について4段階尺度により自己評価を行った後実走行を行い、同一内容の評価表を用いて指導員が評価を行った。また、198名の被験者のうち94名について、本人の了解を得て痴呆症診断テストCERADを試行した。得られたデータに基づいて、運転行動についての「自己評価」、「指導員評価」、「自己評価と指導員評価のずれ」のおのおのの関連性について検討を行い、さらに「年齢」、「年間走行距離」、「CERADの8つの下位テスト」と自己評価能力との関係を分析した。主な結果は以下のとおりである。1、指導員による運転行動評価は高齢になるに従って低い評価となった。2、実験に参加した多くのドライバーにおいて、自己評価が指導員による評価を上回った。高齢になるにつれてその傾向は強く、指導員評価とのずれが増加した。3、CERAD下位テスト得点と安全行動および自己評価の関連性についてGLMにより分析した結果、運転行動の指導員評価や自己評価の妥当性がCERAD下位テストのなかでも単語遅延記憶テスト得点と負の相関を示した。年間走行距離との関連は認められなかった。自己評価能力が危険回避行動に重要な役割を担っていることはよく知られるところである。痴呆症診断テストとして開発されたCERADの下位テストのなかで、とくに単語遅延記憶テストがこの主観的評価能力と関連性が認められたことは、高齢ドライバーの事故傾向性の予測と事故予防の対策の上で有効な知見となりうる。
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