研究課題
基盤研究(B)
一九九〇年のドイツ統一以来現在にいたるまで、特にドイツ社会民主党政権における経済政策、とりわけ労働政策の理念と展開についての研究を進めてきた.二〇〇二年度においては、ドイツのマックス・プランク社会法研究所、およびベルリン自由大学比較ヨーロッパ史研究所を訪問して、集中的な資料収集を行った.さらにユルゲン・コッカ、ハンス・F・ツァッハー、ゲルハルト・A・リッターなど、ドイツの著名な代表的研究者との議論を重ねる中で、現在の社会民主主義の労働政策についての認識を深めることができた.大量失業の長期化に対する積極的労働市場政策の展開とその多様化は、イギリス・ブレア政権とも共通するワークフェアの新理念を持ち、これまでの社会国家・福祉国家からの方向転換をもたらしつつある.同時に、雇用形態の多様化に伴う伝統的な正規労働関係の浸食、それが間接的にもたらす協約体制の基盤の弱化という問題は、ドイツが一九世紀の資本主義化以来形成してきた歴史的な社会システムそのものを変化させつつある.ヨーロッパ・モデルやドイツ社会国家の歴史的な見直しが、イギリスでのニュー・レイバーと共にドイツでの社会民主主義の新政策によってすすむ一方、さらに経済と労働の関係を社会全体で根本的に見直し組織しなおそうとする労働の未来論の発想も生まれるなど、ドイツではヨーロッパに先駆けて、新たなシステムづくりのための政策的模索が様々になされる段階にはいってきている.
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