研究概要 |
本研究は,金融資本市場の自由化・国際化の急速な進展に伴う新しい派生商品の市場導入,取引量の巨大化,情報テクノロジーの浸透,それに伴うファイナンス理論・知識の高度化による市場環境の変革に対し,ファイナンスの研究と教育の一層の充実・高度化を図るために,ファイナンスに関わる基礎的調査と理論研究に加え,実験科学的なアプローチ,Experimental Finance(実験ファイナンス)の可能性とその国際的な展開を目指すものである。 11年度には,金融テクノロジーが金融資産価格,金利,為替などの不確実性を制御する有力な手段となっていることに着目し,保険リスク証券や保険デリバティブに関わる最先端金融テクノロジーの動向調査を行うと共に,保険リスクの証券化,特に,カタストロフィー・リスクと保険デリバティブに関する資料収集を行った。一方,国内外の市場について現地調査を実施し,日本・東京,中国・上海,ニューヨーク,シンガポールの株式市場における売買ルールについて,市場のマイクロストラクチャーの視点から分析し,PC上で売買をシミュレートするシステムの設計に着手した。 12年度は,前年度の基礎的調査・理論研究の他に,Experimental Financeの国際的発展を目指し,井尻教授,John O'Brien教授(Carnegie Mellon University), Lim Kian-Guan教授(The National University of Singapore), Sang-Koo Nam教授(Korea University),王偉講師(中国復旦大学),史云講師(中国東北大学)を招き,アジア仮想金融市場を構築することを目指したファイナンス国際化情報集積拠点を形成し,ファイナンス関連の情報や知的資源を共有するネットワーク作りを進めた。 13年度においては,アジアにおける金融・資本市場の自由化・国際化について分析を行うために,昨年に引き続き,Lim教授,Nam教授,井尻教授,平木多賀人教授(国際大学)を招き,研究会を開催した。また,ファイナンスの実験科学的アプローチとして,カーネギーメロン大学,復旦大学,高麗大学,シンガポール国立大学とFAST(Financial Analysis and Security Trading)を用いて,仮想金融市場を形成し,多国間でバーチャルトレーディングを行った。 これらの研究活動を通じて,国際的次元からファイナンスに関わる知的資源を共有するネットワーク作りを進め,アジアの仮想金融市場の構築を目指したファイナンス国際化情報収集拠点を形成することができた。
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