研究概要 |
重イオン励起によって生ずる電子励起状態の極端に大きな高密度励起効果を研究しいている中で、これまでの光物性の結果とは全く異なる発光帯を発見した。それは、UVからVISにかけての短命(<100PS)幅広の発光で、はじめアルミナ結晶で見つかった。ついで、イオン結晶のほとんどすべてと他の酸化物ヤダイアモンドについて測定をおこなった結果、ほとんどの結晶について同様の発光が見つかった。すなわち特定の物質の特別な発光現象ではなく、普遍性の有る基礎発光体である。更に調べると、収率に物質依存性が有ること、励起密度依存性が非線形であること、がわかり、decayの温度依存性などの結果を合わせて考えると、電子一空孔プラズマに帰属できそうである。であれば、絶縁体では初めてのことである。また、イオントラックの集団励起体の発光としてもこれまでにないものである。この結果は、絶縁体の極限環境における物性研究や、イオン照射効果の研究に対するブレークスルーになるのではないかと期待できる。このような発見が出来たのは、われわれの開発した世界最速である、単一イオン単一光子時間相関法の高速性のおかげである。しかし、現在単チャンネルしかなく、時間分解スペクトルはビームの揺らぎに影響されやすく、正確なスペクトルが得られにくい。それを解決するために、同時8チャンネル測定法を開発することとした。特注で8chアノードのMCP入りPMTを作り、TAC, ADC, CFD, AMP, INTERF,等測定系を全て8CHとすることとした。現在、測定系はおおむね完成したのであるが、イオン加速器が昨年4月より始まった改造工事のため運転不能の状況にある。実験は工事の完成待ちであるので、昨年度報告に加える新しいものは、8チャンネル高速decay測定装置の完成についてだけである。
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