研究概要 |
地球の上部マントルに安定領域をもつと考えられている幾つかの含水相について研究した.含水ワーズレアイトに関し,対称性の異なるものが存在することが報告されていたが,本研究により,対称性の変化は構造の基本モジュールの積み重なり方の違い,すなわち,stacking faultによることが明らかになった.このことから無水のワーズレアイトと含水ワーズレアイトは連続固溶体を形成すると考えてよいことが示された.また,22GPa,1680℃の条件下で合成された含水リングウダイトの結晶構造を解析した結果,Siの5%にMgとのdisorderが認められた.SiとMgとのdisorderが見出されたのはマグネシウムシリケイトのスピネルでは本研究が最初の例である.Phlogopiteとmuscoviteについて8.5GPaまでの高圧下における単結晶X線回折法と赤外吸収スペクトル法による研究を行った結果,OH伸縮振動のバンドの圧力依存性はphlogopiteとmuscoviteでは圧力に対して逆の傾向を示すことがわかった.3.9GPaの高圧下までの単結晶X線回折法による解析の結果は,圧力による構造の変化は,加圧によってもほとんど変化しないsilicate層と最も圧縮されやすいK siteによって特徴づけられることが解った.10.8GPaまでの高圧下でのphase Aの構造を放射光及び封入型X線管を用いた単結晶X線法で調べた結果,phase Aの構造の圧力に対する振る舞いは,オリビンであるforsteriteによく似ていることが解った.今回humite groupの鉱物の一つであるchondroditeについて6GPaまでの高圧下で結晶構造の研究をし,結晶構造や弾性定数はforsteriteに極めて近い事を明らかにした.
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